「定期預金を解約する人が増えている」という話を見聞きすると、自分も預金を動かしたほうがよいのではないかと感じるかもしれません。まとまった定期預金を持つ人のなかには、解約した資金を不動産投資に回し、家賃収入を得ることを考える人もいるでしょう。
結論からいうと、定期預金を解約する人が全国的に増加していると断定できる公的なデータはありません。
日本銀行は定期預金の残高や新規受入高などを公表していますが、「何人が中途解約したか」「解約した理由は何か」「解約した資金をどこへ移したか」までは分かりません。
また、家計が保有する現金・預金全体が大きく減少しているわけでもありません。金融機関によっては預金残高が減っている場合がありますが、別の銀行へ預け替えられた可能性もあります。銀行の預金が減ったことと、預金者が資産運用のために定期預金を解約したことは同じではありません。
そのため、「多くの人が定期預金を解約して不動産投資へ資金を移している」と考えるのは早計です。一方で、金利や物価、老後資金への関心をきっかけに、定期預金の持ち方を見直す人がいることは考えられます。
定期預金を解約する人が増えたように見える理由
満期後の預け替えも「解約」と表現されることがある
定期預金からお金を引き出した人が、すべて満期前に中途解約したとは限りません。満期を迎えた定期預金を更新せず、普通預金へ移す場合や、金利の高い別の銀行へ預け替える場合もあります。
こうした資金移動まで含めて「定期預金を解約した」と表現されることがありますが、満期後の受け取りと中途解約では意味が異なります。
定期預金を利用する人が減っているかを考える際は、次の動きを分けて見る必要があります。
- 満期前に中途解約した
- 満期後に普通預金へ移した
- 別の銀行の定期預金へ預け替えた
- 満期後に生活費として使った
- 株式や投資信託、不動産などへ移した
定期預金の残高が減っていても、その全額が投資商品へ流れたとは限りません。
銀行ごとの金利差が意識されやすくなった
定期預金の金利は、すべての銀行で同じではありません。預入期間や預入金額、金融機関、キャンペーンなどによって異なります。
現在の定期預金よりも高い金利を提示する銀行があれば、満期後に資金を移す人が出てくる可能性があります。場合によっては、満期を待たずに預け替えを検討する人もいるでしょう。
ただし、金利が高い銀行に預金が集まる動きは、定期預金そのものが敬遠されていることを意味しません。定期預金から資金が出ているのではなく、銀行間で資金が移動しているだけの場合もあります。
預金以外の資産運用が身近になった
株式、投資信託、不動産投資などの情報を目にする機会が増え、預金以外の方法で資産を持つことを考える人もいます。
定期預金は、あらかじめ決められた金利で資金を保管しやすい一方、大きな収益を目指す商品ではありません。そのため、老後資金や余裕資金を少しでも増やしたいと考え、資産の一部を投資へ回す人もいると考えられます。
ただし、定期預金を解約した資金のうち、どれだけが不動産投資へ向かっているかを示す統計はありません。不動産投資が注目されていることと、定期預金の解約者が増えていることを直接結び付けないようにしましょう。
まとまった支出のために資金が必要になる
定期預金を解約する理由は、資産運用だけではありません。住宅の修繕、車の買い替え、医療費、介護費用、子どもへの援助など、まとまった支出に対応するために解約するケースもあります。
特に50代や60代になると、退職後の生活準備や家族の事情によって資金が必要になることがあります。定期預金の解約が増えているように見えても、その理由が投資とは限らない点に注意が必要です。





