鉄分不足の4つの原因を徹底解説
鉄分不足の症状に心当たりがあった方も多いのではないでしょうか。ここからは、なぜ鉄分不足が起こるのか、その原因を4つのカテゴリに分けて解説します。自分に当てはまる原因を知ることが、効果的な対策の第一歩です。
原因1:鉄分の摂取不足
最も多い原因が、食事からの鉄分摂取の不足です。日本人の食事摂取基準によると、月経のある成人女性の鉄分推奨量は1日10.5mgですが、実際の平均摂取量は約7mg前後にとどまっています。特に以下のような食生活の方は要注意です。
- 朝食を抜く習慣がある:1日の食事回数が減ることで鉄分の摂取機会が減少
- 過度なダイエット中:カロリー制限が鉄分摂取の制限にも直結
- 偏食がある:肉や魚をあまり食べない、野菜中心の食事に偏っている
- インスタント食品やファストフードが多い:加工食品は鉄分含有量が少ない
原因2:鉄分の吸収低下
食事から鉄分を摂っていても、体内でうまく吸収できない場合があります。胃酸が鉄分の吸収を助ける重要な役割を果たしているため、胃の機能に問題がある方は注意が必要です。
吸収を妨げる要因としては、胃切除後の方、萎縮性胃炎のある方、セリアック病やクローン病など消化管の疾患がある方が該当します。また、食事と一緒に飲むお茶やコーヒーに含まれるタンニンが鉄分の吸収を妨げることも知られています。
原因3:鉄分の需要増大
身体が通常以上の鉄分を必要とする時期があります。需要に供給が追いつかないことで鉄分不足が起こるパターンです。
| 対象者 | 需要が増える理由 | 必要量の目安 |
|---|---|---|
| 妊娠中の女性 | 胎児の発育、血液量の増加 | 通常の約2倍(1日20mg以上) |
| 授乳中の女性 | 母乳への鉄分移行 | 通常の約1.2倍 |
| 成長期の子供・思春期 | 身体の発育、血液量の増加 | 成人と同等またはそれ以上 |
| アスリート | 筋肉の酸素消費増大、発汗による鉄損失 | 運動強度に応じて増加 |
特にアスリートの鉄分不足は「スポーツ貧血」とも呼ばれ、ランニングなどの衝撃で足裏の赤血球が壊れる「行軍性貧血」や、大量の発汗による鉄分の喪失が原因になることがあります。
原因4:鉄分の排泄・損失の増加
体外に失われる鉄分が多いことで不足するパターンもあります。最も身近なのは月経による出血です。月経のある女性は毎月約15〜30mgの鉄分を失うと言われています。月経過多(経血量が異常に多い状態)の場合は、失われる鉄分も大幅に増加します。
そのほか、消化管からの慢性的な出血(胃潰瘍、大腸ポリープなど)も鉄分喪失の原因になります。特に中高年の男性で原因不明の鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、消化管出血の可能性を調べることが重要です。
鉄分不足になりやすいのはこんな人
鉄分不足は誰にでも起こりうるものですが、特にリスクが高いのは以下のような方々です。
| タイプ | 主なリスク要因 | 推定される影響 |
|---|---|---|
| 月経のある女性 | 毎月の出血による鉄損失 | 日本人女性の約50%が鉄不足 |
| 妊娠中・授乳中の女性 | 胎児や母乳への鉄分供給 | 妊婦の30〜40%が貧血 |
| 成長期の子供・思春期 | 急速な体の発達 | 思春期女子の約25%が鉄不足 |
| アスリート | 筋肉の酸素消費、発汗、衝撃 | 女性アスリートの約50〜60%が鉄不足 |
| ダイエット中の人 | 食事制限による摂取不足 | カロリー制限で鉄分摂取も減少 |
| 偏食の人・菜食主義者 | 動物性食品の不足(ヘム鉄不足) | 非ヘム鉄は吸収率が低い |
「隠れ貧血」を知っていますか?― 健康診断では見つからない鉄分不足
鉄分不足について語るうえで、絶対に知っておいていただきたいのが「隠れ貧血」の存在です。正式には「潜在性鉄欠乏」といい、健康診断では見逃されやすい”静かな鉄不足”です。
隠れ貧血とは何か
通常の健康診断では、貧血の判定にヘモグロビン(Hb)値を使います。女性の場合、Hb値が12g/dL未満で「貧血」と診断されます。しかし、Hb値が正常範囲であっても、体内の貯蔵鉄(フェリチン)がすでに枯渇している状態、これが「隠れ貧血」です。
鉄分は体内で以下の3つの形で存在しています。
- 機能鉄(ヘモグロビン鉄):全身に酸素を運ぶ鉄。全体の約60〜70%
- 貯蔵鉄(フェリチン):肝臓などに蓄えられた予備の鉄。全体の約20〜30%
- 輸送鉄(トランスフェリン結合鉄):血液中を移動中の鉄。全体の約1%
鉄分が不足すると、まず貯蔵鉄(フェリチン)から先に減っていきます。この段階ではヘモグロビン値はまだ正常を保っているため、健康診断の結果は「異常なし」。しかし身体はすでに鉄不足のサインを出しており、先ほどチェックリストで挙げたような症状が現れ始めます。
なぜ健康診断で見逃されるのか
一般的な健康診断の血液検査では、ヘモグロビン値は測定しますがフェリチン値は測定項目に含まれていないことがほとんどです。そのため、貯蔵鉄が枯渇していてもヘモグロビンが正常であれば「貧血なし」と判定されてしまいます。
フェリチンの基準値は一般的に12ng/mL以上とされますが、鉄分の専門家の間では25ng/mL以下で鉄欠乏の疑い、50ng/mL未満で最適とは言えないと考える意見もあります。不調を感じている方は、医療機関で「フェリチン値も測ってください」と具体的にリクエストすることが大切です。
| 指標 | 基準値(女性) | 隠れ貧血 | 鉄欠乏性貧血 |
|---|---|---|---|
| ヘモグロビン(Hb) | 12.0 g/dL以上 | 正常(12.0以上) | 低下(12.0未満) |
| フェリチン | 12 ng/mL以上 | 低下(12未満) | 著しく低下 |
| 血清鉄 | 50〜170 μg/dL | 低下傾向 | 明らかに低下 |
| TIBC(総鉄結合能) | 250〜370 μg/dL | 上昇傾向 | 明らかに上昇 |
