【2025年版】鉄分の1日の推奨摂取量

鉄分をどのくらい摂ればよいのか、具体的な数値を把握しておきましょう。ここでは、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づいた推奨摂取量を紹介します。

成人の1日あたりの鉄分推奨摂取量

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年齢区分男性(推奨量)女性・月経なし(推奨量)女性・月経あり(推奨量)
18〜29歳7.5mg6.5mg10.5mg
30〜49歳7.5mg6.5mg10.5mg
50〜64歳7.5mg6.5mg10.5mg
65〜74歳7.0mg6.0mg
75歳以上7.0mg6.0mg

ここで特に注目してほしいのが、月経のある女性の推奨量は10.0〜10.5mgと、男性や月経のない女性に比べて約1.5倍も多いという点です。月経による出血で毎月鉄分が失われるため、それだけ多くの鉄分を食事から補う必要があります。

妊娠中・授乳中の付加量

妊娠期・授乳期はさらに多くの鉄分が必要になります。胎児の成長や胎盤の形成、母体の血液量の増加に伴い、鉄の需要が大幅に高まるためです。

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時期推奨量の付加量
妊娠初期+2.5mg
妊娠中期・後期+9.5mg
授乳期+2.5mg

特に妊娠中期・後期は付加量が+9.5mgと大きく、通常の推奨量と合わせると1日あたり約16〜20mgもの鉄分が必要になります。食事だけで補うのが難しいケースも多いため、産婦人科の医師と相談しながらサプリメントの活用も検討するとよいでしょう。

耐容上限量

摂りすぎを防ぐための基準として、耐容上限量も設定されています。成人男性で50mg/日、成人女性で40mg/日が目安です。通常の食事でこの量を超えることはまずありませんが、複数のサプリメントを併用する場合などは注意が必要です。

鉄分の吸収率を高める食べ合わせの黄金ルール

せっかく鉄分を意識して摂っても、吸収されなければ意味がありません。鉄分の吸収率は食べ合わせによって大きく変わります。ここでは、吸収を促進する組み合わせ阻害する組み合わせの両方を知っておきましょう。

吸収を促進する3つの栄養素

ビタミンCは、鉄分の吸収を高める最も効果的なパートナーです。非ヘム鉄は消化管内で三価鉄(Fe3+)の形で存在していますが、ビタミンCがこれを二価鉄(Fe2+)に還元することで吸収されやすい形に変えてくれます。ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける、鉄分豊富な食事と一緒にオレンジジュースを飲むなどの工夫が効果的です。

たんぱく質も鉄分の吸収を助けます。肉や魚に含まれるたんぱく質は、非ヘム鉄の吸収を促進する「ミートファクター」として知られています。野菜や豆類の鉄分を効率よく摂るには、肉や魚と組み合わせた献立にするのがおすすめです。

クエン酸にも鉄分の吸収を促進する効果があります。クエン酸は鉄とキレート結合し、吸収されやすい形にする働きがあります。梅干し、酢の物、柑橘類などクエン酸を含む食品を食事に取り入れると、鉄分の吸収率アップが期待できます。

吸収を阻害する3つの成分

一方で、鉄分の吸収を妨げてしまう成分もあります。

タンニンは緑茶、紅茶、コーヒーなどに含まれるポリフェノールの一種で、鉄と結合して不溶性の化合物を作り、吸収を阻害します。鉄分を意識した食事の際は、食事中や食後すぐにこれらの飲み物を大量に摂ることは避け、食後30分以上空けてから飲むようにしましょう。

フィチン酸は玄米、全粒粉パン、豆類などに多く含まれる成分で、鉄と結合して吸収を妨げます。健康のために玄米食を取り入れている方は、ビタミンCを多く含む副菜を添えるなどの工夫で吸収率の低下をカバーすることが大切です。

リン酸塩はハム、ソーセージ、インスタント食品などの加工食品に食品添加物として使われることが多い成分です。リン酸塩も鉄の吸収を阻害するため、加工食品に偏った食生活は鉄分不足のリスクを高める可能性があります。

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区分成分含まれる食品鉄分への影響
促進ビタミンC柑橘類、ブロッコリー、パプリカ、いちご非ヘム鉄を吸収しやすい形に還元する
促進たんぱく質肉、魚、卵、大豆製品ミートファクターとして非ヘム鉄の吸収を促進
促進クエン酸梅干し、酢、レモン、グレープフルーツ鉄とキレート結合し吸収を助ける
阻害タンニン緑茶、紅茶、コーヒー鉄と結合し不溶性化合物を形成する
阻害フィチン酸玄米、全粒粉、豆類鉄と結合し吸収を妨げる
阻害リン酸塩ハム、ソーセージ、加工食品鉄の吸収を阻害する

鉄鍋・鉄フライパンの活用で手軽に鉄分アップ

食べ物からの鉄分摂取に加えて、もう一つ注目したいのが鉄製の調理器具の活用です。鉄鍋や鉄フライパンで調理すると、調理中に微量の鉄分が食品に溶け出し、手軽に鉄分の摂取量を増やすことができます。

特に効果が高いのは、酸性の食品を調理する場合です。トマトソース、酢を使った煮物、味噌汁などを鉄鍋で調理すると、酸によって鉄が溶出しやすくなります。ある研究では、鉄鍋でトマトソースを煮込んだ場合、ステンレス鍋と比較して食品中の鉄分量が有意に増加したと報告されています。

鉄鍋から溶出する鉄分は非ヘム鉄の形態ですが、トマトや柑橘類に含まれるビタミンCやクエン酸と一緒に摂ることで吸収率を高められます。つまり、鉄鍋でトマト煮込みを作るというのは、鉄分補給の観点から見ると非常に理にかなった組み合わせなのです。

鉄製調理器具を日常的に使うことの利点は、特別な意識や努力なしに鉄分を補えるという点にあります。毎日のサプリメント摂取が面倒だと感じる方や、できるだけ自然な形で鉄分を摂りたいという方には、鉄鍋の導入はおすすめの方法です。

ただし、鉄鍋だけで1日に必要な鉄分をすべてまかなうことはできません。あくまでも日々の食事からの摂取を補助する方法として位置づけ、バランスの良い食事を基本とすることが大切です。

また、鉄製調理器具は使い始めに油ならし(シーズニング)が必要で、使用後はすぐに水分を拭き取るなどの手入れも欠かせません。しかし、適切に手入れすれば何十年も使える耐久性があり、長い目で見れば経済的でもあります。

まとめ:鉄分は「意識して摂る」ことが大切

鉄分は体内にわずか3〜5gしか存在しない微量ミネラルですが、酸素の運搬、エネルギー産生、免疫機能のサポートなど、生命維持に不可欠な役割を担っています。食品に含まれる鉄分にはヘム鉄(吸収率10〜20%)と非ヘム鉄(吸収率2〜5%)の2種類があり、吸収率の違いを理解したうえで食べ合わせを工夫することが大切です。

鉄分の効果は貧血予防だけにとどまらず、メンタルヘルスの安定、学習能力や集中力の維持、さらには美髪・美肌にまで及びます。一方で、日本人女性の2人に1人が鉄不足という深刻な現状があります。食事摂取基準2025年版では、月経のある女性の推奨量は10.0〜10.5mgと設定されていますが、実際にこの量を毎日の食事で摂るには意識的な取り組みが求められます。

ビタミンCやたんぱく質との食べ合わせで吸収率を高める工夫や、鉄鍋の活用など、日常生活に取り入れやすい方法を組み合わせて、「なんとなく不調」の原因になりがちな鉄分不足を防いでいきましょう。気になる症状がある方は、血液検査でフェリチン値を確認してみることをおすすめします。